Pochitto(ぽちっト)神戸 | 音楽コラム「Danke schon感謝しながら生きていく」
更新:2017.7.23
第1回---音楽コラム「Danke schon感謝しながら生きていく」
「Danke schon感謝しながら生きていく」
《私は本当に音楽が好きなのか・・・》
その自問が私を留学へと導いた。なんのツテもなく、ゼロからだった。まずは本やネットで私立音楽学校と提携していて、宿付きの語学学校を探した。海外どころか飛行機さえ乗ったことのない私がたった独りで音楽の都ウィーンへ向かった。とにかく必死だったので怖さや不安は感じなかった。着いたその日にフラっと寄った教会で聴いたミサ曲に、張り詰めていた涙が一気に流れた。《私は音楽が好きなんだ》と身体中で感じた。
《もう一度この地でピアノをやり直そう》と心に決めた。いいスタートを切ったと思ったが、人生はそう甘くなかった。その2日後お腹の激痛で救急車で運ばれた。ドイツ語もままならない私は意識が朦朧とするなか財布と辞書だけはしっかり握りしめていた。診断結果は子宮内膜症。手術をすすめられたが、半ば強引に退院した。その帰り道私の中のスイッチが入った。「もう何も怖くない」戦闘モードに入った。個人レッスンをしてもらう先生を探しに音楽教室の扉をいくつも叩き「聴講させてください」と言って廻った。冷たい目でみられることも多かったがピアノを勉強したい一心でぐっとこらえた。
5年間という留学生活。練習と学校の合間に数えきれないほどのコンサートに足を運んだ。本場の音楽を体に刻み付けたかった。立ち見席3ユーロのチケットを手に入れるためにパンをかじりながら講演2時間前から行列に並んだ。
へとへとの毎日だったが、たくさんの心優しい人との出会いと、遠く離れた家族の支援で頑張れた。その感謝の気持ちと常に自分に試練を課すことを忘れずこの音楽というレールを走り続けようと思う。
善家 麻貴
大阪音楽大学ピアノ専攻科卒業。 ウィーン・プライナー音楽院に留学。 4年間の勉強を終えディプロム取得。
第6回兵庫県学生ピアノコンクール最優秀賞
第2回ロマン派音楽コンクール優秀賞。
第16 回ソリストコンクール奨励賞など数々のコンクールに入賞。
中島みか、武岡登士子、Pro.W.Watzinger、Pro.A.Franz 各氏に師事。2008 年クラヴィア・ビッテ音楽教室設立。 ピアノ指導と共に多彩なサロンコンサートを企画、演奏。