Pochitto(ぽちっト)神戸 |
更新:2017.9.23
第2回---
「留学生として過ごしたウィーンの街」
コッツコッツコッツ・・今でも耳に残っているのは石畳を歩く馬のヒヅメの音。重厚かつしなやかな筋肉の動きでリズムよく出る音。その音がヨーロッパの乾燥した空気に乗っかると高らかに舞い上がるように響く。まるでモーツァルトの音楽だった。音楽のヒントが隠されているような期待に胸が弾んだ。モーツァルトを弾くことが大好きだった私が選んだのはモーツァルトをはじめ、偉大な作曲家たちが活躍したウィーンの街。
が住む3区は、オペラ座のある中心地から歩いて20分ほどのところにあった。アパートの前から出ていた路面電車は「ベートーヴェンの散歩道」として有名な森の入り口まで連れていってくれた。どうしても苦しさから抜け出せないときにだけ私はそこへ向かった。耳の聞こえなくなったベートーヴェンが寄り添ってくれているような心強さをもらい、次の日からまたがんばれた。家から歩いて3分ほどのところにあったヴェルベデーレ宮殿もまた挫けそうな自分を支えてくれる場所であった。観光客がそれほど多くなく、地元の方がジョギングしたり散歩する比較的静かな場所だった。ベートーヴェンの森が父のような存在ならここはまるで母の温もりがあった。レッスンの帰りに悔し涙を流す私をそっと抱擁してくれるような場所だった。元気を与えてくれたのは毎日のようにどこかにいけば聴ける一流のコンサートの数々。素晴らしい演奏に身体中満たされ、余韻に浸りながら夜道を一人ブラブラ歩きながら帰った。一人満足げに笑みを浮かべて歩く私。誰も怖くて近寄れなかったのか怖い思いをしたことは一度もなかった(笑)。
今思えば懐かしく、贅沢な満たされた時間に感じる。
