【鈴蘭台の地に隠された日本エレキギター創世記の足跡】

神戸市北区鈴蘭台。ここが、日本のエレキギター創世記に深いかかわりのある土地であることは、ほとんど知られていない。1950年代、戦後まだ数年という時代に、神戸の山奥、鈴蘭台にニッカドーという電気楽器メーカーが存在していた。

当時、電気楽器の製造は時代の最先端を行く分野の一つだった。関東のTESCOと並んで関西のニッカドーは、 エレキギターをはじめとする電気楽器の開発に重要な役割を果たしていた。この二社が分派して徐々に日本の電気楽器メーカーができていったのだという。

歴史の中に埋もれていたこの事実を私が知ることになったのは、一本のギターとの出会いがきっかけだった。2017年1月。私はまだ関東で暮らしていた。40年間住み慣れた横浜を離れ、関西への移住を間近にしていたのだ。 家の事情で春には神戸に引っ越すことが決まっていた。

そんな中、横浜の行き付けの楽器屋の前を通り過ぎようとした時、何気なく向けた視線の先に不思議なギターが飾られていた。

FIRSTMAN BROADWAY CUSTOM 1968

50年前のジャパンヴィンテージギターだ。私は一目見て釘付けになり、そこから一歩も動けなくなった。試奏してみると音も個性的で素晴らしく、家に帰ってもいつまでもそのギターのことが頭を離れなかった。

とはいえ引っ越しを間近に控えた状況・・・経済的な余裕は無かった。次の仕事も決まっておらず収入の見通しも立たない。その上、音楽仲間も知った店も無い関西の土地で、自分の音楽活動が どうなっていくのかさえわからなかった。今ここでぎたーに投資をする意味があるのか、何日も思い悩んだ。

石川ヨナ
ブルースロック・シンガーソングライター。横浜生まれ横浜育ち。2017年より神戸に移住し、関西各地でライブ活動を展開中。
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