運・縁・恩を大切に

神戸のボールペン画家の橋本薫です。私は過去８ヵ国で絵の展示会を開催してきました。今回は初めての海外での展示会についてお話ししたいと思います。

遡ること四年前、シンガポールに日本料理店「花蝶」という素敵なお店がある事を知りました。こちらのお店で展示会をすれば沢山の方が絵を見て下さるに違いない。そう直感的に考えた私は職務経歴書を英語版、日本語版の両方仕上げ、自分の作品の画像と共にメールで送りました。

しばらくすると女将さんから「良いですよ。いつにしますか？」と返信を頂きました。きっと断られるだろうと思っていた私は拍子抜けしました。そして絵を50枚額縁に入れ、展示会のポスターをトランクに詰め込んで、単身シンガポールに渡りました。大人になってからこんなにワクワクしたのは久し振りでした。お店に着き、いざトランクを開けてみるとせっかく詰めた額縁が数枚壊れていました。最初の頃は海外にパッキングし慣れていないので、そういう事がよくありました。するとお店の外国人スタッフの方が額を丁寧に修理して下さいました。

初めての海外での展示会は女将さんやスタッフさん、お店の常連さんのお陰で大成功に終わりました。それからドバイ紀伊國屋やパリジュンク堂、マレーシア伊勢丹等、日系企業にも営業をかけ世界各地で絵の展示会を開催しました。現在コロナ禍の為海外には行けず、日本全国の東急ハンズを巡業中です。ある時シンガポール花蝶の常連さんが東急ハンズでの展示会を見に来てくださいました。ＳＮＳで繋がっておけばいつでもどこでも再会が叶う世の中になり、大変有り難く思います。

当時お世話になった女将さんはというと、シンガポールから宮崎県に本帰国され、地元のフレンチレストランで働かれている事を知りました。ちょうど私は東急ハンズ鹿児島店での展示会を控えていた為、前乗りして隣県に居る女将さんに会いに行く事にしました。実に四年振りに再会を果たせました。着物で接客されていた女将さんは現在は洋装で、昔と変わらずテキパキと接客されていました。

女将さんの仕事が終わるのを待って、夜は蛍を見に行きました。あんなに多くの蛍を見たのは生まれて初めてで、一生忘れられない旅になりました。私の人生において大切にしている事は「運・縁・恩」です。運ばかりはどうしようもないかもしれませんが、ご縁を大事にし、恩を忘れないと、いつか運がついてくると信じています。女将さんに色々として頂いた分、いつか私も誰かのお力に立てる日が来れば嬉しいです。

橋本　薫(はしもとかおる）ボールペン画家
神戸市出身神戸市在住、兵庫県立明石高等学校美術家卒業
いいちこ米国ポスターや山田錦のお猪口白鶴消毒ミストのデザインを手がける。現在、国内、海外問わず、活動中。

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