Danke schon

Pochitto(ぽちっト)神戸 | 

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更新:2017.11.23

第3回---

「ウィーンで出会った異文化の人たち」

私が住んでいたのは最大4人でのルームシェアが可能なアパートだった。留学、旅行、仕事など目的も期間も様々だった。アメリカ、韓国、スペイン、ハンガリー・・・ウィーンに滞在しているのに、アパートの中で現地のオーストリア人は大家さんとその家族のみ。「ここは一体どこ・・・」小さな屋根の下でリアルFacebookをしているような不思議な体験だった。

しかしそれはまた、異国でも疎外感を感じず、自分らしくいられた理由のひとつだった。みんな母国を離れそれぞれの理由で頑張っている。それが私を奮い立たせてくれた。私のルームメイトにポーランド人のマダムがいた。彼女は家政婦として来ていた。ポーランドと言えばショパンの生まれた国。試験曲であるショパンの練習曲を何ヵ月も部屋で弾いていた私は度胸試しとしかいいようがない。

シェアアパートにピアノを置いていいはずがないが、私が自分の部屋で練習できたのは大家さんの好意だった。ピアノの練習時間が十分にとれず悩んでいた私に大家さんが「地下室へおいで」と案内してくれた。そこには古いアップライトがポツンと壁際にあった。暗くてひんやりした地下室だったが、そのピアノを見た途端心の中に光が差し、「君の部屋にピアノが来るまではここを使えばいいよ」と鍵を渡してくれた大家さんの優しさに心があったかくなった。

それから地下で練習していると、音をたどって色んな人がやって来て声をかけてくれるようになった。ブラジル人のおじちゃんはタンゴの楽譜を持ってきて「これ、弾いておくれ」と言った。それまでクラシック音楽の世界にどっぷりつかっていた私は、ピアノが持つ万人に愛される音楽の幅広さを気づかされた。たどたどしい私のタンゴの演奏にもおじちゃんはニコニコ優しい顔でリズムに合わせて体を揺らしてくれた。音楽は世界共通語・・・心底感じた。

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