Pochitto(ぽちっト)神戸 | 許先生の健康TIPS
更新:2024.5.23
第6回---許先生の健康TIPS
■ネット情報にご用心
先日クリニックにて、ある患者さんからこんな話があった。「高血圧の定義が160㎜Hgぐらいになるって、厚生労働省が認めたらしいですよ。」と。驚きである。そんな話は寝耳に水で、学会参加直後で、この話題はひとつも出ていなかったので、にわかには信じられないが、本人はいたって真剣であった。いわく、インターネットで見つけた情報だと。
ネット情報、これは非常に便利である。私も日常診療のなかでよく活用するが、やはり「本当に正しい情報なのか?」という視点を忘れてはなりません。ネット情報は、第三者が検証しているわけでもなく、正確性の保証はありません。能登半島地震の際にも、気象庁が認めた人工地震だとか、津波だとかというデマ情報が混乱を招いたことは記憶に新しい。私たちは情報にあふれた社会に生活している。だからこそ、正確な情報を見極める必要がある。
「人は見たいものしか見ない」、古代ローマ帝国将軍カエサルの言葉です。見たいものだけを見てしまう、これは確証バイアスとして知られています。どれだけ中立的な思考を心がけても、自分にとって都合のいい情報は受け入れやすく、都合の悪いようなことは無意識のうちに遠ざけてしまうものです。血圧の定義がかわったら、自分は高血圧ではなくなる、薬を飲まなくてもいい!そんなうれしいニュースは信じてしまう傾向にあることを忘れてはなりません。今回のケースも、公的な出版物でない写真をみて、思い込んでしまったというものでした。
デマ情報に流されて健康を害した例は、数えればきりがありません。なんの因果関係も検証されていない症状を子宮頸がんワクチンによる副作用としたデマ情報を拡散したため、日本ではこのワクチン接種が遅れてしまい、子宮頸がんの発生率がG7ではワースト1位になっていることも、具体的な被害の一つと言えます。
え!と思ったら、本当だろうか?他のひとの意見はどうだろう?と立ち止まることが大切です。そしてなにより、かかりつけ医とよく相談することを忘れないでください。
院長 許 智栄