Pochitto(ぽちっト)神戸 | 「 どうぶつえんのおばけ」
更新:2019.7.23
第15回---どうぶつえんのおばけ
あるところに、どうぶつえんでくらしている、おばけがいました。
そのおばけは、どうぶつをビックリさせてばかり。
大きなゾウさんも、ビックリぎょうてん。
ねむっているナマケモノさんも、ビックリぎょうてん。
みんなをビックリさせるから、おばけは、どうぶつたちからきらわれていました。
そんなある日。としおいた、おじいさんライオンが、おばけにいいました。
わしはもう、すっかりおじいさん。
ガオーッとほえても、人間だれもビックリしない。
だから、おばけさん。わしのうしろに立って、人間をビックリさせてくれんか。
「おやすいごようさ」
その日から、おばけは、としおいたライオンとおなじオリに入って、人間をビックリさせていきました。
としおいたライオンが、ガオーッ。
そのうしろから、おばけが、ワッ!
人間は、ビックリ。
としおいたライオンは、とってもよろこびました。
「ありがとう、おばけさん。わかいころにもどったようだ」
おばけは、うれしくなりました。
おこられるビックリもあれば、よろこんでくれるビックリもあるんだな。
けれど、そんな日々はながくつづきませんでした。
としおいたライオンが、びょうきになってしまったのです。
もう、ガオーッとほえる元気もありません。
いっしょに人間をビックリさせることもありません。
それでも、ライオンはうれしそうでした。
おばけさん。きみという友だちができたから。
さく:こうだ ともゆき
【こうだ ともゆき】プロフィール
1984年大阪生まれ。京都精華大学卒。
個人の編集業などを経て、2016年岡山県真庭市に移住。
著書に『幸せな人持ち人生』(ごま書房新社)がある。