Pochitto(ぽちっト)神戸 | 「 さいごの3分」
更新:2018.3.23
第7回---さいごの3分
その砂時計は、男の子がとても大切にしているものでした。
なかなか家に帰ってこない、船長をしているお父さんがくれた、宝もの。
とても大切にしていましたが、ある日、うっかり上のぶぶんのガラスを割ってしまいました。
つぎにひっくりかえしたら、きっと、砂が割れたところからながれ出てしまう。
男の子は悲しくなって、泣きました。
たっぷり泣いたあと、さいごの3分を、いつ、なににつかうか、考えました。
そんなある日。
とてもひさしぶりに、お父さんが家に帰ってきました。
男の子はうれしくて、お父さんに抱きつきました。
そして「いまだ!」とおもって、砂時計をひっくりかえしました。
砂が、外にながれ出ていくあいだ、男の子はずっと、お父さんに抱きついていました。
やがて、砂はぜんぶ外にながれ出てしまいました。
男の子は、その砂をつまんで、ポケットに入れました。
「この砂は、お父さんと僕、2人で過ごした時間をおぼえてる」
さく:こうだ ともゆき
【こうだ ともゆき】プロフィール
1984年大阪生まれ。京都精華大学卒。
個人の編集業などを経て、2016年岡山県真庭市に移住。
著書に『幸せな人持ち人生』(ごま書房新社)がある。