Pochitto(ぽちっト)神戸 | 「 オリのなかのリス君 」
更新:2017.9.23
第4回---オリのなかのリス君
あるところにオリのなかにすんでいる、リス君がいました。
閉じこめられたわけではありません。
じぶんからオリのなかに入った、リス君。カギだって、リス君がもっています。
「オリのなかにいたほうが、安全なんだ」そう言って、ずっとオリのなかでくらしていました。
「そとの世界は、たのしいよ」鳥さんが言っても、「あぶないよ」とリス君。
「向こうの山はとてもきれいなんだ」シカさんが言っても、「あぶないよ」とリス君。
ところが、リス君は、すこしずつオリのなかのくらしにあきてきました。
「ちょっとぐらいは、そとの世界に出てもいいかな」
そうして、カギでオリをあけようとしました。
「あれ? あれれ?」
しかし、オリはひらきません。
長いあいだ、ほうっておいたせいで、カギが壊れてしまったのです。
リス君は、そとの世界に出ることができなくなりました。
「もっとはやく、オリから出ておけば、よかった」
ガッカリして、リス君はカリカリと、オリをかみはじめました。
さく:こうだ ともゆき
【こうだ ともゆき】プロフィール
1984年大阪生まれ。京都精華大学卒。
個人の編集業などを経て、2016年岡山県真庭市に移住。
著書に『幸せな人持ち人生』(ごま書房新社)がある。