Pochitto(ぽちっト)神戸 | 「 ながいながいトンネル」
更新:2020.5.23
第20回---ながいながいトンネル
あるところに、
おおきな山に、ポッカリあなをあけた
トンネルがありました。
それはとてもながーーいトンネル。
いちど入ると、なかなか出口が見えません。
そのトンネルへ、
ジュンくん家のくるまが入っていきます。
くらいくらいトンネル。
ながいながいトンネル。
いくら走っても、出口が見えません。
ジュンくんは、トンネルに言いました。
「ねえ、トンネル。出口はまだ?」
トンネルは、なにも言いません。
しばらくして、
ジュンくんはまた、トンネルに言いました。
「いつになったら、出口が見えるのさ」
それでもトンネルは、なにも言いません。
――じつは、
トンネルはそれどころではありませんでした。
ずっと、おおきな山をひとりでささえているのです。
ジュンくんたちを守るために、いっしょうけんめい、
おおきくて、おもい山をひとりでささえていました。
トンネルは、ふんばりすぎて
返事ができなかったのです。
やがて。
「あっ!」
ジュンくんは声をあげました。
さきのほうに、出口の光が見えました。
さく:こうだ ともゆき
【こうだ ともゆき】プロフィール
1984年大阪生まれ。京都精華大学卒。
個人の編集業などを経て、2016年岡山県真庭市に移住。
著書に『幸せな人持ち人生』(ごま書房新社)がある。