Pochitto(ぽちっト)神戸 | 「 カガミのなかのだるま」
更新:2019.11.23
第17回---カガミのなかのだるま
あるところに、ダルマがいました。
これまで、カガミをいちども見たことのなかったダルマが、はじめてカガミを見たときのこと。
ダルマは、カガミのなかのだるまに言いました。
「どうしてきみは、そんなにムズカシイ顔をしているんだい?」
でも、へんじはありません。
「なにかをひとりで、ガマンしているのかい?」
やっぱり、へんじはありません。
おかしいなあ。へんじがないなあ。
くびをかしげると、かたむいて、カラダがゆらゆら。
すると、カガミのなかのだるまも、ゆらゆら。
たおれそうだけど、たおれない。なんど転んでも、しっかりとおきあがる。
ダルマは、ふしぎにおもいました。
「なんど転んでも、おきあがるじゃないか。
かなしいときはどうするのさ。
泣きたいときはどうするのさ」
それでも、カガミのなかのだるまは、なにも言いません。じっと、だまったまま。
そんなカガミのなかのだるまを見て、ダルマは、ぽつりと言いました。
「ぼく、きみみたいなのが、だいすきだな」
さく:こうだ ともゆき
【こうだ ともゆき】プロフィール
1984年大阪生まれ。京都精華大学卒。
個人の編集業などを経て、2016年岡山県真庭市に移住。
著書に『幸せな人持ち人生』(ごま書房新社)がある。