Pochitto(ぽちっト)神戸 | 「 お母さんのにがお絵」
更新:2021.1.23
第24回---お母さんのにがお絵
絵をかいて、プレゼントしよう。
お母さんが入院しちゃったから、
お母さんの絵をかいて、
プレゼントしよう。
きっとよろこぶぞ。
男の子は、お母さんのにがお絵をかきはじめました。
でも。
う~ん。なんだかちがうなあ。にてないなあ。
お母さんはもっとやさしくて、かわいいのに。
かいても、かいても。
男の子は、「にてないなあ」とくびをかしげるばかり。
ある日、
お父さんが「お母さんのおみまいにいくよ」と言っても、
「まだ、にがお絵がかけてないから、
おみまいにいけないよ」と男の子。
だって、お母さんににがお絵をプレゼントするんだもん。
プレゼントしたら、きっとよろこんでくれるんだもん。
けれど、かいてもかいても、
おもうように、うまくかけません。
ちがうよ!
お母さんはもっとやさしくて、かわいいんだから!
こころのなかでさけびます。
やがて、男の子はくやしくって、
泣きだしてしまいました。
そんな男の子に、お父さんは言いました。
「まわりを見てごらん」
まわりには、これまでかいた
お母さんのにがお絵がたくさん。
つくえにも、ゆかにも、ソファにも。
男の子は、お母さんに会いたくて、
たまらなくなりました。
「お母さんに会いたい!
ねえ、お父さん。はやくおみまいにいこう!」
さく:こうだ ともゆき
【こうだ ともゆき】プロフィール
1984年大阪生まれ。京都精華大学卒。
個人の編集業などを経て、2016年岡山県真庭市に移住。
著書に『幸せな人持ち人生』(ごま書房新社)がある。