Pochitto(ぽちっト)神戸 | ぽちトピックス(ふれ愛びと)
更新:2023.5.23
第37回---ぽちトピックス(ふれ愛びと)
- Q野球肘検診の重要性について教えてください。
- A野球肘とは野球における投球動作により肘を痛めるスポーツ障害の総称です。野球肘には大きく分けて二つあります。肘の外側に発生する離断性骨軟骨炎(外側型野球肘)と肘の内側に発生する内側側副靭帯損傷(内側型野球肘)があります。中でも肘の外側に発生する離断性骨軟骨炎(以下OCD)は保存加療(一定期間、投球を含む肘に負担のかかる練習などを休む)により自然治癒をさせる事が可能です。しかし、初期には痛みの症状が無い事がほとんどで、病状がでて病院で受診するときには病期が進行している事が多くあります。進行期では治癒期間も長くなり、場合によっては手術も必要となります。手術が必要な選手を減らすためにもOCDの早期発見が重要であり、そのためにも超音波検査(エコー)が有用になってきます。我々兵庫野球指導者会(以下HBCA Hyogo Baseball Coaching Academy )は、一人でも多くの野球少年を野球肘から守りたい。そういった考えでこの活動を行っています。
- QなぜOCDが起こりうるのでしょうか?
- A先ず第一に考えられるのが土日しか運動しない子供たちの環境だと思います。昔は外で遊び木登りやジャングルジム、雲梯など知らない間に関節の可動域や柔軟性を身に着けていましたが、今は習い事、ゲーム機遊びなどで放課後公園などで遊ぶ子供が少なくなり身体を動かす機会がなくなって来てるのも一つの要因だと思います。次にあげるのが勝利至上主義による登板過多。大会や試合の多さもそうですが同じ投手だけを使い続ける投げ過ぎによる障害であったり土日だけの活動であるがゆえに身体を酷使している。タイトな公式戦などは投球制限などルール上それ以上投げられませんが、練習試合などは投球数がカウントされません。指導者も目安になる投球数をカウントしていないのが現状です。指導者の障害や怪我に対する認識の低さなど投球動作を改善できる指導者が少ないのも原因の一つに挙げられると思います。来年以降、少年野球もライセンス制度が本格導入されます。その講習過程の中で野球肘の危険性などを学習しないと単位が取れません。従って少しは認知され、指導者の考えが変わる事が望めます。HBCAでは第1回野球肘検診会から今年3月に行った第6回野球肘検診会(兵庫県立リハビリテーション中央病院)まで少年野球選手(小中学生)約4200人(年間約700名 6年)を検診してまいりました。去年は全国に先駆けて兵庫県高等学校野球連盟と共催にて第1回兵庫県高校野球肘検診(兵庫大学キャンパス)を実施、兵庫県高等学校野球連盟加盟登録160チーム(各チーム2名総勢320名が検診に参加)小中学生では約1割がOCDもしくはOCDの疑いがある。高校生にいたっては約2割の選手が何らかの治療など行っています。今回、第6回野球肘検診にて新たな試みとして高校野球部員、野球部マネージャー13名(公募)を対象とした医療インターンシップを実施し将来医療系の仕事を目指す高校生にとって貴重な体験機会を提供することができました。今後この野球肘検診の活動を通じて、選手、指導者、父兄にもOCDの危険性を広く知っていただき、指導者、父兄は無理をさせない。選手は無理をしない野球における予防医学として野球肘検診を位置づけていただきたいものです。