神戸大学コラム

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更新:2023.2.23

第31回---神戸大学コラム

【アマミノクロウサギは種子の運び屋さん】

神戸大学の様々な魅力をお伝えする「神戸大学コラム」。第31回のテーマは、「アマミノクロウサギは種子の運び屋さん」です。今回は理学研究科の末次健司教授らの研究をご紹介します。

アマミノクロウサギは世界で唯一の黒毛のウサギで、その名の通り奄美大島と徳之島にのみ生息しており、絶滅危惧種に指定されています。個体数が少なく、さらに夜行性であることから、詳しい生態は知られていませんでした。

そのアマミノクロウサギが、同じく絶滅危惧種であるヤクシマツチトリモチを食べていることが食べ痕から推測されました。ヤクシマツチトリモチは、光合成をやめて他の植物の根に寄生して生活する、キノコのような見た目をした植物です。多くの植物は、果肉を食べた動物が、種子を含んだ糞をあちこちでばらまくことで生息域を広げていますが、ヤクシマツチトリモチは他の植物のようなフレッシュな果肉をもたないため、どのように種子を運んでもらっているのか謎に包まれていました。

そこで研究チームは、アマミノクロウサギがヤクシマツチトリモチを食べ、その種子を糞と一緒に排泄することで「種子の運び屋」となっているという仮説を立て、これを検証することにしました。赤外線カメラでヤクシマツチトリモチにやってくる動物を観察し、アマミノクロウサギの糞を顕微鏡で調べ、動物園で飼育されているアマミノクロウサギにもヤクシマツチトリモチを食べてもらいました。その結果、確かにアマミノクロウサギが、ヤクシマツチトリモチの「種子の運び屋」であると証明できたのです。

今回の研究成果から、ある絶滅危惧種を守ることが、別の絶滅危惧種を守ることにつながることが示されました。このように生き物同士の繋がりの理解を深めることは、生態系全体を守ることに寄与すると期待されます。

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↑アマミノクロウサギ(末次教授提供)

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