Pochitto(ぽちっト)神戸 | 神戸大学コラム
更新:2023.7.23
第33回---神戸大学コラム
【夜の神戸大学六甲台キャンパスから新種の蜂を発見!】
神戸大学の様々な魅力をお伝えする「神戸大学コラム」。第33回のテーマは、「夜の神戸大学六甲台キャンパスから新種のハチを発見!」です。今回は日本学術振興会特別研究員の清水壮さん(研究当時、農学研究科研究員)、農学研究科の前藤薫名誉教授による研究をご紹介します。
昆虫は地球上で最も成功した生物のひとつです。その中でも、他の昆虫などに寄生して高度に多様化を遂げたグループとして寄生性ハチ類(寄生バチ)が知られています。寄生性ハチ類は、農林業害虫などに寄生して、その数をコントロールする重要な役割を担っています。様々な生物と複雑な生物間相互作用を進化させてきた寄生性ハチ類は、生物の多様性やその進化を研究する上で、特に重要な昆虫群の一つであると考えられています。
清水研究員らは寄生性ハチ類の中でも、主に夜間に行動するヒメバチ科アメバチ亜科というグループを対象に研究を進めており、今回、兵庫県神戸市の住宅街に隣接した神戸大学六甲台キャンパスで採集されたハチの中に、所属不明なものがあることを知り、その正体の解明に取り組みました。
最新の系統分類学の手法を用いて、採集された所属不明種の正体の特定を試みたところ、これまでに知られている全世界のどの種とも異なった特徴を持っていることが確認されたため、新種「コウベアメバチ」 (学名Ophion kobensis Shimizu, 2023) として記載を行いました。
住宅街に隣接する大学キャンパスから新種が発見されたことは、ごく身近な環境にも私たちがまだ認識できていない未知の生物が生息していることを示唆しています。本研究が夜行性昆虫の多様性や系統進化、他の生物との関わり合いについての解明につながることを期待するとともに、普段見過ごしている豊かな生物の多様性への関心を高め、身近な自然やその保全に意識を向けるきっかけになることを願います。
神戸大学総務部広報課