Pochitto(ぽちっト)神戸 | どうぶつ科学コミュニケーター通信
更新:2020.5.23
第8回---たまごや甲羅のひみつ。
読者のみなさま、コロナ禍による外出自粛や休校で日々大変かと存じます。今回は、もし外出自粛が続いていても、入手可能あるいはご自宅にあるであろう、生卵のひみつを実験とともにご紹介します。
突然ですが、指を立てずに手で生卵を包み、思い切り握ってみてください。大人の男性でも絶対に割ることはできません。実は、卵は一点集中した力には弱いのですが、全体的な力には驚くほど強いのです。卵を20個くらい並べた上に板を置き、その上に人間が乗っても割れません。これは、卵の形状がアーチ構造になっているからです。例えば有名な錦帯橋もアーチ構造になっていて、構造そのものには釘などは使用しておらず、アーチ型が生み出す物理的な力で支え合っています。全体的な負荷に強いこの構造は、トンネルの天井にも使われています。
アーチ構造はいろいろな生き物にみられます。例えば、リクガメ。カメの甲羅は板状の骨を角質の層が覆った2層構造です。骨は重いけど丈夫、角質は軽いけど骨より弱いという特徴があります。陸で暮らすリクガメは、骨の層を薄く、角質の層を厚くして軽くしたいのです。でも、そうすると弱い甲羅になってしまいますから、アーチ構造で補強しているのです。
身の回りの食材、生き物あるいは人工物の中にアーチ構造はないか探してみると面白いかもしれません。
指さえ立てなければ、手に包み込んだ生卵を思い切り握っても潰れません。念のため、シンクや風呂場で実験してください。
工事中で内部のアーチ構造が見える錦帯橋(山口県岩国市)。
水生のクサガメ(左)とリクガメ類の甲羅標本(右)。水生のカメの甲羅は平たく重い。陸生のカメはアーチ状で軽い。
どうぶつ科学コミュニケーター / 大渕 希郷(おおぶちまさと)
上野動物園・飼育展示スタッフ、日本科学未来館・科学コミュニケーター、京都大学野生動物研究センター・特定助教を経て、現在フリーランス活動中。
動物から植物、昆虫、微生物まで様々な生きものを用いた科学教室をご要望に合わせて企画いたします。その他、ペットボトルを用いた顕微鏡作り、偏光板を使ったサイエンスアート教室など工作教室や、各種講話、科学コミュニケーション研修、展示デザインなども承ります。
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