Pochitto(ぽちっト)神戸 | 日本人と英語
更新:2020.1.23
第12回---日本人と英語
「あなたの話す英語から察するに、あなたの母語はチョッピーなのね。」ジャクリン先生は私の英語のインスピレーションだった。
声の調子や言葉の音色に自分の気持ちや人生観まで現れてくるのが、話すということであり、話す言語にはそれぞれのメロディーがある。メロディーが似ている相手とは親近感や連帯感を持ちやすいのでコミュニケーションしやすい。
英語らしいイントネーションで話すのは、相手が理解しやすい話し方で伝えるという目的もあるが、それ以上に、英語を話す文化や社会の一員であることのアピールなのだ。「もっと身体全体で英語のメロディーに同化していくのよ、肺やお腹の辺りまで音が響いているのを感じるのよ」と教えてくださった。
外国語を学ぶ最良の方法は、その言葉を話す社会で生活することである。今は仮想的にも環境があるが、昔は留学するしかなかったので、日本人は命懸けで海を渡ってひたすらその地で同化しようと努力することが語学の錬成だった。
私は15歳で一人で飛行機に乗り、モスクワでトランジットしてヒースロー空港で入国管理をパスし、ケンブリッジまでは電車で移動した。少しも外国に行きたくなかったし、寮になど住みたくもなかった。ただ、帰国子女だという英語教師からあなたに留学は無理だと言われたので、反骨精神の塊だった私は何がなんでも行ってやると決心した。
ジャクリン先生は、ご自分もそうやって自尊心を育ててきたとおっしゃった。「あなたの私への低い評価は間違ってる、そう証明するだけで私にはやり抜く理由は十分だったの。」ところでチョッピーとは、ブツブツ切れるという意味で、日本語と英語では音声器官の使い方が根本的に違うことをシンプルに表現している。
息を出し続けながら、こういう風に読んでごらんと教えると、生徒さん達はみるみる上達していく。ジャクリン先生は去年の6月に急逝された。「例外的に優れた教師」という形容がぴったりの先生だった。
私の英語探求は、これからもずっとジャクリン先生が道を照らしてくださる。ジャクリン・クラーク先生を偲んで。(つづく)
ECC鈴蘭台駅前教室 前島朋子先生