Pochitto(ぽちっト)神戸 | 日本人と英語
更新:2019.7.23
第9回---日本人と英語
7月はスクールイヤー(新学年は9月に始まる)の終わりで、長い夏休みには全寮生が退寮して、留学生は帰国する。アッパー6(6年生は上下の2年ある)の学生は、Aレベルのファイナル(最終試験)の結果次第で大学の進学先が決まり、その大学に入学する前にほとんどみなギャップイヤー(一年間の休学期間)を取る。ヨーロッパやオーストラリアを回遊したり、アフリカで人道支援に参加したり、香港やカリブでバケーションを過ごす。
当然、ロワー6以下の学生にも夏休みの宿題などというものはなく、本物の空白期間であり、自分の好きなことをする。
ブルネイ出身のエスタは、アッパー6のアートの学生だった。同じシダーホルム寮に一人部屋を持っており、壁一面に細い黒線の輪郭に水彩絵具でグラデーションした作品が貼ってあった。Aレベルで「A」をとった彼女はアートの先生から、僕のキャリアで最も優秀な学生だと褒められた。父親がイギリス人で母親が中国系ブルネイ人のハーフなので東洋的な容姿をしていたが、イギリス人らしい雰囲気で上品だった。
クラン(友人のグループ)もイギリス人だったが、タイや香港のアジア系留学生とも仲良くしていた。しかし英語以外は話せないというから、お母さんは中国語を話さないのかと聞くと、母親はチャイニーズアクセントを嫌って、きちんと英語で話さないと、あなたの英語に何が起こったんだ!とすごい剣幕で怒られると言っていた。夏休みにブルネイに帰国すると、必ず日本に観光に行くんだ、何もかもが清潔で美味しくて、みんな親切だから一番好きな国だ、と言って日本人の私を信用してくれていた。日本から差し入れが届くと一緒にワカメスープを食べておしゃべりした。部屋が魚くさくなり、ヨーロッパ系の友人はヤッキィと鼻を摘んで近寄らないので二人きりで話し込むには好都合だった。(つづく)
ECC鈴蘭台駅前教室 前島朋子先生