Pochitto(ぽちっト)神戸 | 日本人と英語
更新:2020.3.23
第13回---日本人と英語
イギリス北方の内陸部スタフォードシャーにある全寮制学校は、小高い丘の上にあった。敷地内は泥濘んで、うっかり靴が汚れていると、校舎裏あたりでよからぬことをしていたのではないかとあらぬ嫌疑をかけられる。
校則違反の喫煙事件で弁明できなかった私は、吸いもしないタバコの廉でディテンションになり、掲示板に名前が張り出された。とたんに「ファグある?」と同級生から話しかけられるようになり、「残念だがない」というと週末の外出に誘われた。
学校から週に一度マイクロバスが出て、外出許可をもらえば30分ほど離れた小さな町にお出かけできた。チッピー(フィッシュアンドチップスの店)は午後2時に閉まるので大急ぎで買って、包紙から油とビネガーが滲み出てベトベトでもお構いなしに食べ歩きした。町にはチッピーと八百屋、雑貨店などが数軒あるだけで、午後3時には店が閉まり、ただぶらぶら薄寒い道を歩きながらゴシップとファグを満喫するのが彼女らの余暇らしい。
超人ハルクのような容姿で不良だと思っていた下級生の男子が、プリフェクト(模範生)としてニコニコしながら、か弱そうな幼い下級生達を食堂で誘導していて驚いた。全校で十人ほどしかいないプリフェクトに選ばれる学生は品行方正、文武両道のエリートで尊敬されている。
彼のガールフレンドはリアというパンクっぽいスモーカーで、ハスキーな声で髪はブリーチ、ダーク系のメイクが似合っていたが、最近制服が合わないほどに肥満になった。数日前から見かけないと思っていたら、両名はイクスペルドと掲示されていたという。彼は頑張っていたのに残念だ、いずれこうなると分かってたからかなと話していた。寮長先生はドームの一角に住んでいたが、終礼の報告に行くと一緒に英語の先生もいて、先生方も住居はシェアなのかと思っていたら、レズビアンだよ、知らなかった?と教えてもらった。
下級生がファームヤードで動けなくなっているのを救助されてディテンションになっていたが、寮を抜け出して町まで行く途中で泥に足を取られて体力が限界になったらしい。それで校舎が丘の上にあるのかと納得した。私は潜入捜査でもしている気分で、彼女らの会話を熱心に聞いた。(つづく)
ECC鈴蘭台駅前教室 前島朋子先生