Pochitto(ぽちっト)神戸 | 日本人と英語
更新:2018.7.23
第3回---日本人と英語
外見は日本人でも、話したらブリッツだった。私は日本から来た、おどおどしたお人好しの旅行者じゃない。ブリッツというのは生粋の英国人のことで、私は彼らの話し方をまねて、表情をまねて、ジェスチャーをまねてブリッツになりすまし、日本人らしい素振りは見せないことでマイノリティから脱却したかった。どこでも少数派はイジメにあい、誤解され不利益を被る。とにかく短期間でどこまで 「本物」に近づけるか。私は、日本の両親に国際電話をかける時も英語で話し、ノートにも教科書にも日本語で書き込まず、夢でも英語をしゃべり、ひたすらモノリンガル環境で「英語脳」を育てながら、奇跡が起きるのを待っていた。
モノリンガルとは、一つの言語だけを使う人や社会であり、日本人も英国人も外国語はそれほど必要ないので、ほぼモノリンガルである。そうなると言語は高度に発達してくるので、微妙な発言や語彙のバリエーションで表現力を高め、多様なアクセントができる。アクセントは、出身地方や社会的な階級でそれぞれに異なる訛りで、その話し方を身につけることは、そこにすんでいなければ到底できないので、話す英語の訛りがすなわちアイデンティティになる。だからそのアクセントで話す者どうしは、文化的にも共通の認識があり、同じグループに落ち着くのである。高校留学の2年目、イギリスの寮生活でまだ私は一人ぼっちだった。どのグループにも入れない。アクセントが違うからだ。
物理の授業で北京出身の中国人留学生が質問し始めると、他の学生はみな椅子に背もたれて腕組みをする。ゴーバット先生も「ここでの問題は、言葉の問題だよね」と言いだしてギブアップしてしまう。何年もイギリスに住んでいる中国人の彼は、ひどい訛りのまま早口で話し、声ばかり大きくて話の内容はうまく伝わらない。秀才と言われている彼で数年かけてこの程度で、私のブリッツ作戦は成功するのか?ふいに先生に当てられて、うっかり「はいゴウバッド先生」と発音したら、先生は「私は君のような野菜ではないから腐りはしませんよトマト君。」その後、私の名前は朋子の英音読みトミーコウから、トマートウになった。
ECC鈴蘭台駅前教室 前島朋子先生