Pochitto(ぽちっト)神戸 | 街角浪漫
更新:2022.5.23
第32回---街角浪漫
この冬に訪れた知床半島が大変な事になっています。
ウトロ(我々が通る所)港の麓近く、北海道の名付け親、松浦武四郎の像が建つオロンコ岩を背に救出に向かう船を見る度、心に靄が立ち込めます。亡くなられた方々のご冥福と不明の方々の発見をお祈りします。
アイヌ語で地の果ての岬と言う意味の知床は2005年に世界遺産に登録されました。沈没したカシュニ(狩り小屋)の滝付近は真冬には鳥か鯨位しか行く事が出来ない所の一つです。半島全体が山脈で、その両側が活断層になっていますので、どこを掘っても温泉が湧きます。
以前にも海外から資源調査に何度か来たらしいのですが、ここの自然が開発を許しませんでした。勿論、熊も許しませんでした。故に壊されていない生態系が世界遺産になりました。
近所の(といってもここから京都位離れていますが)、阿寒湖辺りは硫黄を取りつくし、高倉健さん達が命を懸けて線路を引いた釧網本線に貨物列車が通る事も無くなりました。今、ロシアの蛮行に対し、多くの国が制裁を課していますが、化石燃料代等の為に足並みが揃いません。
地下資源は地球が何億年かけて創り出した財産です。という事はこの星に住む全ての人の宝物のはず、それを我々に断りも無く勝手に取って金にするとはあつかましいやろ?長い歳月を生きる地球の営みが、ここ鈴蘭台にも直ぐに判る所が有ります。
小部小学校からJA兵庫六甲の北側を超えて神鉄車庫にかけて少し急に切り立った台地になっていますが、何千万年か前にズレた撓曲(とうきょく)といわれる断層の名残です。くぼんだ側の鈴蘭台駅辺りには水が集まり2本の暗渠(あんきょ)が敷かれ、その地下に引かれた川の合流地点近くの傾斜の緩やかな場所に幻の「神有耶馬駅」が在りましたが、想定外の水害にはひとたまりも無かったのが伺えます。先日の読売新聞の夕刊に、星和台にお住まいの堀内正美さんが、西鈴蘭台の夕日の素晴しさを語っておられましたが、確かに播磨灘に向って遮るものの無い高い青空を朱色に染めていくのを眺めていると、心に時が溶け込んでいくのが共感出来ます。知床にもプユニ(穴のある場所)岬という絶景スポットが有りましたが、寒すぎて観に行けませんでした。
生きていれば何処に居ても毎日、朝日を拝み夕日に感謝しながら日々を過ごしていけますが、戦や事故にしろ、普通に生きておられた人達の物語が不意に途切れる事を思うとやはり霞が晴れません。
作 山善寿司 大将