Pochitto(ぽちっト)神戸 | 街角浪漫
更新:2023.1.23
第36回---街角浪漫
大人になったらしてみたい事が二つ有りました。
石原裕次郎率いる七曲署の刑事松田優作演じるアフロヘアーの「ジーパン」が犯人の尾行中に、美容院に入って、シャンプーだけをして来るのです。
あっけに取られた「ゴリさん」こと竜雷太に、常識ですよ。と言ったのを観て、坊主頭の中学生は憧れます。高校になると入部したラグビー部の出来がよく、二か月に一度は学校から坊主を命じられ、大学では合宿代や遠征費を稼ぐためにバイト、いや勉学に勤しみ、会社勤めとなると流石に「アフロ」は出来ず、歳を重ねるにつれ髪の毛は色と共に抜け、とうとうやり損ねてしまいました。
ですがもう一つはまりました。
靴磨きです。靴と靴下は同色に、勿論靴底も皮張りで無いと丁寧に扱ってもらえません。靴を台の上に置くまでは程良い緊張感がみなぎります。馴染みの磨き屋さんが出来た頃に大阪を去りました。西鈴蘭台駅にも立ち食いうどん屋さんの跡に有ったのですが、修理専門でしたので台の上に足を置く事はもうありませんでした。
憧れていたといえば、強風の日、四国からの帰りに鳴門大橋でビックリする思いをしたので怖くなって淡路島に降り、そういえば島一周を夢見ていたなぁと童心に帰って西浦海岸沿いを走っていると、丹生山系が目に飛び込んできました。
西に目をやると雄甲山、雌甲山があるだけで高い山は見当たりません。
昔の船人が丹生山の松を標に漁に出ていたというのもうなずけました。島から見えた丹生山系を、今や道一本で近くに観る事が出来る様になってしまいました。
杉尾神社を超え北に登って行くと頂上に差し掛かります。
ここに桜泉峠とか西小部峠とか道標を付けると交通事故は少なくなると思いますが、この峠には名前が有りません。下りながら左に曲がって行くと何千万年前の衝上断層が作り出した丹生山系と志染川が歳月をかけて削りながら広げていった扇状地の絶景が水源地の大池から広がってきます。
この風景が故郷と似ているとイスラエル人の家族が越してきた位ですから、正にグローバルな絶景です。この道、西鈴方面への登りになると対照的に人工的な造形美を見せます。
茜色に染まった西の空に夕日が沈んで暫くすると、四車線の中央帯に建てられた真珠色の照明灯が整然と連なり満天の星の輝く夜空に向かって真っ直ぐ伸びているのが目に入ります。それが銀河鉄道の滑走路のようでそのままオリオン座の浮ぶ宇宙へと旅立つような感覚に陥ります。又夜明け前には灯りが東の空の朝焼けの中に重なり合いアルプスの峰々からしか見る事の出来ない荘厳な色彩のグラデーションを観る時が有ります。
言葉を無くす程の感動を下さった神様からその時呪文を教わります「太陽に吠えろ」と、知らんけど。
作 山善寿司 大将