Pochitto(ぽちっト)神戸 | 街角浪漫
更新:2022.7.23
第33回---街角浪漫
もう逢えなくなる事って、哀しいですね。
北五葉小学校の時の修学旅行はお伊勢参りでした。集合時間よりかなり前に校門をくぐり抜けてみたものの、どうやって時間を使いましょうかと校庭に目をやれば、男子は鉄棒に、女子はブランコにもう既に人が集まっていました。鉄棒は偉大です。
普段は遊ぶことも無かった人達とただひたすらクルクル回っているだけで友情が芽生えます。一緒にいた田村君がバス旅は暇やろうと、持って来ていた今よりもコンパクトな創刊号の少年サンデーとマガジンを貸してくれ、こりゃあ虜になるわなと、訪れた夫婦岩よりも鮮明に記憶に残っています。
そんな小学校時代のとある夏の日、藍那に行くにはトンネルはまだ開通しておらずなかなかの冒険の道でした。正にスタンドバイミーの世界、当時忍者に憧れていた龍平君とまあちゃんこと太平記好きの井上君と、フーと呼んでいた博識の藤岡君と4人でクワガタ採りに出かけました。
、道路の側溝で干からびていたイモリを発見、フーが忍者にはこれが最高のご馳走や、木葉隠れの術を使う奴は我先にこれを食べてるんやと大きく囁きました。既に龍平君の姿は無く、溝の中に彼の姿は在りました。今でも想い出す度、吹き出してしまいます。
しかしながら彼は、赤影はおろか青影にもなれませんでした。ポリポリと彼の口から聞こえてきた乾いた音とあの表情は今でも脳裏に浮かんできます。転校して来た同級生がストーブが有る!と必ず喜ぶ冬の日の砂場に怪獣好きの龍平君が戦いの出番を待っていました。下との寒さの違いに風邪が蔓延し、トローチ類は許可されていました。上級生ともなると、甘ったるい物は受け付けません。龍角散こそ大人の味です。口に入れて勢いよく吐くと、白い粉が怪獣の吐き出す武器の様に飛散していきます。
が、タイミングが合わないと舌の上で苦い香味と共に溶けていきます。龍平君は最強の怪獣役ですので、出番は何時も最後です。溶けていく度に一口入れていく彼の表情が変わっていくのですが、休み時間が終わる頃には大抵一缶空けていました。
今年で50歳を迎える同じ時代を生きてきたラジオ、クーガーから今日も番組を流しています。生きているから聞ける音です。彼が生きた芸能界の人達の声を聞く度に愛されていたんやなあと実感します。
二年前に還暦同窓会を開く予定でしたが、集まることはかないませんでした。あの時の色んな事をもう謝る事が出来無くなりました。親愛なる上島龍平君、再会するのにはもう少しかかると思うけど僕達同級生がこの世にいる限り君も心の中で生きています。合掌。
作 山善寿司 大将