Pochitto(ぽちっト)神戸 | 街角浪漫
更新:2021.3.23
第25回---街角浪漫
最初の宣言から1年が過ぎました。旅人と呼ばれるさすらいの民族にとっては、流氷が溶けていくやら花が散ってしまっただとか、現場の空気を身体に感じないと、心に沁みないこの種族にとっては、まさにパーテイションの向こう側の御馳走を手に取れない状態だけが過ぎていったようなものですね。
ご時世ですからおとなしく過ごしていますと又見つけてしまいました。今観る数々の美術品や建物の殆どが、現在のような時に創られている事を。疫病等が蔓延し生きていくのも困難になった時、国を率いる偉い人達は、目に見えないものから民を守るために国家プロジェクトを立ち上げました。
東大寺の大仏様の建立もそのひとつです。我々祖先は、この世から不安を払拭し、後の子孫の幸せのために祈る事で一丸となって艱難辛苦を乗り越えてくれました。こうして残っている国宝を始めとする日本の宝物は、明日への希望の賜物だったのです。
新たな疫病が流行ると、先祖が残した時代を乗り越えていった仏像や神社に全快治癒を願い、同時に、災いが降りかかった時代の度に優れた平安治癒を願った宝物を、その時の芸術家は創作していきました。そうした皆の願いや祈りが、時と共に御神体に重なりながら込められていくから、それを観た後世の人は魂が癒されたり心が救われたりするものだと気付きました。
にもかかわらず、そんな魂の籠った有り難い芸術品の数々を、駅スタンプを集める位の軽い気持ちでしか観ていなかった事を恥じ入るばかりです。さてお判りですね。まもなく私達はこの時代を救ってくれるような芸術を視る事が出来ますよ。
お亡くなりになられた方々の事を考えると本当に申し訳ありませんが、毎年何処かで起きる災害に心痛む人は誰もいないと思います。その度にその場所から、その地に合わせて平成の名曲?しあわせ運べるように"が聞こえてきます。
子供達が唄うあの沁みるメロディ、忘れる事の無い時間を過ごし、あの歌に勇気づけられ、得体の知れない使命感を感じた者の一人として平穏な時に歌い継がれていってもらいたいと思っています。そして今、コロナ禍において活動を封印された数多くの芸術家の方々が動き出す時、後世の子孫達がこの時代に生きた人々の事をリスペクトしてくれる作品が観られるのを桜の開花を楽しみにするが如く待っています。
作 山善寿司 大将