Pochitto(ぽちっト)神戸 | 街角浪漫
更新:2023.11.23
第41回---街角浪漫
兵庫が誇る大冒険家「植村直己」さん語録の中に、げっきょくさんて日本の何処に行っても駐車場を持っている大地主さんやねといった話、月極駐車場の月極を名前と勘違いされたエピソードが残っていますが、先日、鈴蘭台駅近くの居酒屋「ひよこ」のママさんが、六甲山の何処に六つの兜(甲)が埋まっているの?と素朴な疑問。毎年平野の祇園さんに幟(のぼり)を奉納されるほど神戸愛の深い人なので埋まっている塚等にお詣りでもしようと思っておられたらしいのですが、931mの進駐軍のレーダーの有った最高地点にも、グルームさんが造った日本最古のゴルフ場六甲山カントリーにも、60年前に出来た六甲山スノーパークのゲレンデにも、三国池の別荘地辺りにも、信州に行かなくても気分が味わえると言われる穂高湖周辺にも埋まっていません。
都が奈良に有った万葉の時代、金剛、葛城山地を超え、大阪湾を隔てて最初に見えるのが、山頂が同じくらいに平たく伸びている山々です。
その山地を「向こう」の山と当時は呼んでいました。それがいつのまにやら向こうが武庫になり、そして数字の呼び名のひい、ふう、みい、よお、いつ、むうの「むう」を漢字に置き換えて六にそして庫では無くこうが甲になり六甲となりました。
つまり武庫も六甲も「むこう」からの同義語で、粋な昔の人々の洒落からでした。
故にこの山地には兜(甲)は埋まってはいません。兜(甲)探しと称して松茸狩りに行っている「しもさん」や、ほっむりして山中に入っているそこの貴方、違法ですよ。六甲山の山並みが横に均一なのは、百万年前に伊弉諾と伊弉冉がオノコロ島を中心に円を描いた事によって出来た断層が幾度も重なってせり上がった大自然の恵みの一つです。
六百m辺りも平らな所が東西に有り、また二百m辺り、即ち鈴蘭台より少し低い高度周辺にも同じ位に平坦な地形が広がっています。その辺りには名谷、白川、鵯越、鶴甲、鴨子ヶ原、渦が森と比較的平坦な所に新しい街が次々に誕生していきました。
又、神様が円を描いてくれたことにより、明治以降もう一つ絶景が増えました。百万ドルと云われる妖艶な輝きを放つ無数の人々が暮らす灯りと、光を吸い込む暗い海との地図通りの境界線を浮かび上がせる夜景です。
終戦後1ドルが360円となったのも円の角度が360度という洒落みたいな決まりだったのですが、この山並から見える夜景の電気代の合計がその当時の百万ドル位の消費量だったとの事。円だけに丸く収まりましたようで。よいお年をお迎えください。
作 山善寿司 大将